焼却炉の排ガス処理設備はどの順序で構成されるのか?
SNCR・反応塔・バグフィルター・SCRの位置と役割から点検手順まで
01 · PROCESS FLOW
焼却炉の排ガスはどのような順序で処理されるのか?
一般的な順序は焼却炉・廃熱ボイラ、反応塔、バグフィルター、SCR(必要時)、湿式洗煙塔(必要時)、煙突です。SNCRの還元剤は炉とボイラの高温域に噴霧します。処理物質が設備ごとに異なるため、ある設備で別の設備の役割を代替することはできません。
順序を決める最大の基準は排ガス温度です。韓国の廃棄物処分施設の管理基準は、一般焼却施設の燃焼室出口温度850℃以上、燃焼ガス滞留2秒以上を定めています(施設の種類・規模で別基準あり)。[5]この高温の排ガスは廃熱ボイラで冷え、反応塔とバグフィルターでさらに下がります。同基準は最初の集じん設備入口の燃焼ガスを200℃以下(処理能力2t/h未満は250℃)と定めており、反応塔とバグフィルターはこの温度以下での運転が一般的です。[5]
A1234B5678図1. 番号は排ガスの通過順、A・Bは経路外の設備です。補機(エコノマイザ・加熱器・送風機など)は省略しました。2のSNCRは設置現場にのみあり、噴霧部が描かれていないため位置のみ示します。概念図であり、規模と配置は現場ごとに異なります。
| 番号・設備 | 役割 |
|---|---|
| A投入クレーン・FEEDING SYSTEM | ピットの廃棄物をホッパへ移し焼却炉に投入します。排ガス経路ではありません。 |
| 1焼却炉 | 廃棄物を燃焼させ排ガスを生成します。韓国の基準は燃焼室出口850℃以上、滞留2秒以上です。[5] |
| 2SNCR (無触媒脱硝) | 炉の高温域に還元剤を噴霧してNOxを低減します。約870~1,150℃で触媒なしに反応します。[1]設置した現場にのみある設備です。 |
| 3廃熱ボイラ | 高温排ガスの熱を回収して蒸気をつくり、排ガス温度を下げます。 |
| 4半乾式反応塔 (SDR) | 消石灰スラリーを噴霧し、塩化水素・フッ化水素・硫黄酸化物などの酸性ガスを中和します。[3][4] |
| B粉末消石灰・活性炭サイロ (DR) | 粉末消石灰と活性炭を貯蔵して排ガスに供給します。粉末反応剤を直接吹き込む方式がDRです。活性炭は水銀を吸着し、集じん設備で捕集されます。[4] |
| 5ろ過式集じん機 (Bag Filter) | ろ布でばいじんと反応生成物、活性炭を捕集します。[3] |
| 6触媒脱硝塔 (SCR) | 還元剤と触媒により、窒素酸化物(NOx)を窒素と水に変えます。[2] |
| 7湿式洗煙塔 | 洗浄液で排ガスに残った酸性ガスを洗い流します。 |
| 8煙突 | 処理を終えた排ガスを大気へ排出します。 |
出典:株式会社マイクロワン自社技術資料に基づく・AIを活用した概念図
いいえ。SNCRの反応には約870~1,150℃の高温が必要ですが、[1]バグフィルターに入る排ガスは韓国の基準で200℃以下に管理されます。[5]そのためSNCRは炉とボイラの高温域に置き、集じん設備の後では触媒を使うSCRがNOxを担います。
02 · EQUIPMENT ROLES
設備ごとの処理対象と処理方法は何か?
SNCRはNOx、反応塔はHCl・HF・SOxなどの酸性ガス、バグフィルターはばいじんと反応生成物、SCRはSNCRで減らしきれないNOxを担います。下表に4設備の位置、処理対象、処理方法をまとめました。
| 区分 | 工程上の位置 | 処理対象 | 処理方法 |
|---|---|---|---|
| SNCR | 焼却炉・廃熱ボイラの高温域 | NOx | 約870~1,150℃域にアンモニア・尿素水を噴霧し、触媒なしでN₂とH₂Oに還元[1] |
| SDR / DR | ボイラの後、バグフィルターの前 | HCl、HF、SOxなどの酸性ガス | SDRは消石灰スラリーの噴霧(半乾式)、DRは粉末反応剤の吹き込み(乾式)で中和[3][4] |
| バグフィルター | 反応塔の後 | ばいじん、反応生成物、飛灰 | ろ布でろ過・捕集[3] |
| SCR | バグフィルターの後(現場により前) | NOx(SNCRで減らしきれない残留分) | 還元剤を注入した排ガスを触媒層に通して還元。一般的な運転温度は約250~427℃[2] |
SNCRは触媒なしで、高温域に還元剤を噴霧する
SNCR(無触媒脱硝)は、触媒を使わずアンモニアや尿素水などの還元剤を高温域に噴霧し、NOxを窒素(N₂)と水(H₂O)に変える方法です。[1]EPAの資料によると反応域は1,600~2,100°F(約870~1,150℃)で、焼却炉やボイラなどの燃焼設備が反応室になります。[1]別途の反応器が不要で、設備費と運転費はNOx低減方法の中で低い部類です。[1]

図2. タンクの還元剤をポンプで送り、炉の高温域の壁面ノズルから噴霧するSNCRの断面概念図です。ごみは火格子上で燃え、上昇する燃焼ガスがここで還元剤と混ざり廃熱ボイラへ流れます。噴霧位置とノズル数は炉の構造と温度分布で異なります。
出典:株式会社マイクロワン自社技術資料に基づく・AIを活用した概念図
反応塔は反応剤で酸性ガスを中和する
反応塔は、消石灰などのアルカリ反応剤を排ガスに接触させ、酸性ガスをカルシウム塩などの固体に変えて除去する設備です。[4]SDR(半乾式反応塔)は消石灰スラリーを噴霧して水分の蒸発中に反応させ、DR(乾式反応)は粉末反応剤をダクトに吹き込みます。[3][4]どちらも反応生成物は乾いた固体で、後段のバグフィルターや電気集じん機で捕集します。[3]水銀対策で活性炭を併せて吹き込む構成もあり、水銀を吸着した活性炭は後段の集じん装置で捕集されます。[4]半乾式・乾式の反応剤処理とろ過式集じん機の組み合わせは、酸性ガスに加えダイオキシン類(CDD/CDF)やばいじん・重金属も制御できる構成とされます。[4]
図3. 排ガスはSDR塔の上部から入ってスラリー噴霧域を通り、塔下部側面のダクトへ出ます。このダクトに右側のサイロから粉末反応剤を吹き込む方式がDRで、ダクトはバグフィルターへ続きます。配置、吹き込み位置、反応剤は設計により異なります。
出典:株式会社マイクロワン自社技術資料に基づく・AIを活用した概念図
バグフィルターはばいじんと反応生成物をろ過する
バグフィルターはフィルターバッグ(ろ布)で排ガスをろ過し、ばいじんを捕集する設備です。焼却炉では反応塔で生じた固体の反応生成物と飛灰もここで捕集されます。[3]ろ過式集じん機は、酸性ガス制御や排ガス冷却と組み合わせて使われることが多い設備です。[4]ばいじんを捕集する設備には電気集じん機(ESP)もあり、違いは「電気集じん機(ESP)とバグフィルターの違いとは?」で比較しました。ろ過方式は「深層ろ過と表面ろ過の違いとは?」で、材質は「工程に合ったフィルターバッグの材質はどう選ぶのか?」で解説しています。
図4. 左は各室にフィルターバッグを吊り下げたバグフィルター、右はその1本の断面の拡大です。ばいじんは外表面に堆積してろ過され、清浄ガスは内側を通って上部出口ダクトへ出ます。室数と本数は設備ごとに異なります。
出典:株式会社マイクロワン自社技術資料に基づく・AIを活用した概念図
SCRは触媒層で残ったNOxを低減する
SCR(触媒脱硝)は、還元剤を注入した排ガスを触媒層に通し、NOxを窒素と水に還元する方法です。[2]最適運転温度は約250~427℃ですが、触媒の種類と排ガス組成で異なります。[2]除去効率は一般に70~90%の範囲です。[2]触媒によりSNCRより低温で高効率が得られる一方、触媒管理と設置スペースが必要です。触媒には、細い流路を蜂の巣状に設けたハニカムモジュールを積層する構成があります。

図5. 左はSCR反応器内の触媒モジュールの位置、右はその一部を拡大したハニカム触媒です。排ガスは細い流路を通り、壁面の触媒表面で還元剤とともにNOxが反応します。概念図であり、形状と配置は触媒と設備により異なります。
出典:株式会社マイクロワン自社技術資料に基づく・AIを活用した概念図
湿式洗煙塔は残った酸性ガスを洗浄液で洗い流す
湿式洗煙塔はこの構成で最後の処理設備です。アルカリ性洗浄液をノズルから噴霧し、残った硫黄酸化物などの酸性ガスを溶解除去します。[3]充填塔方式ではポールリング(Pall Ring)などの充填物を多層に詰め、表面を伝う洗浄液と排ガスの接触面積・時間を増やします。米国EPA資料(SO₂基準)では、湿式の除去効率は半乾式・乾式より高く90%超です。[3]塔出口のミストエリミネータが、排ガスに同伴する水滴を除去します。[3]一方、湿った廃棄物が発生し、その処理費が運転費に加わります。[3]反応塔とバグフィルターの後段にもう一段設ける構成もあります。
Pall Ring (充填物)図6. 左のダクトから入った排ガスが塔内を上昇しながら、多段ノズルの洗浄液噴霧とポールリング充填層を通る湿式洗煙塔の断面概念図です。右の円は充填物の拡大で、表面を伝う洗浄液が接触面積を広げます。洗浄液は底部のタンクとポンプで循環します。充填物の種類と段数は設備により異なります。
出典:株式会社マイクロワン自社技術資料に基づく・AIを活用した概念図
03 · PROS AND CONS
設備ごとの長所と限界は何か?
SNCRは簡単で低コストですが効率が低く、SCRは高効率ですが触媒管理と圧力損失の負担が大きくなります。反応塔とバグフィルターは酸性ガスとばいじんを担うため、その役割の中で比較します。効率は米国EPA資料の一般的な範囲で、実際は設計と運転条件で異なります。
| 区分 | SNCR | 反応塔 (SDR/DR) | バグフィルター | SCR |
|---|---|---|---|---|
| 処理対象 | NOx | HCl、HF、SOxなどの酸性ガス | ばいじん、反応生成物 | NOx |
| 主な長所 | 触媒も反応器も不要で、設備費・運転費が比較的低い[1] | 湿式より設備が簡単で、水使用・廃棄物処理の負担が小さい(SO₂除去基準)[3] | 反応生成物とばいじんを1設備で捕集でき、酸性ガス制御・冷却と組み合わせやすい[4] | 一般に70~90%の高いNOx除去効率[2] |
| 主な限界 | 一般的な効率は30~50%[1]。低負荷時は最適温度域が上流側へ移動[1]。還元剤が残るとリークアンモニアが生じ、硫酸アンモニウムで後段の閉塞・腐食のおそれ[1] | 反応剤の継続供給と反応生成物の処理が必要。半乾式は水分が残るとバグフィルター閉塞のおそれがあり、出口温度を飽和温度より高く管理[3] | フィルターバッグは消耗品。寿命は排ガス温度・変動、酸性ガス・水分、ダスト性状・濃度、払い落とし周期・圧力、差圧管理により短くて1年、長くて5年、平均2~3年 | 触媒層の圧力損失が大きく、送風機の増強が必要な場合がある[2]。被毒・閉塞・摩耗で触媒が劣化すると、除去率は低下しリークアンモニアは増加[2] |
反応塔の除去効率は方式により異なります。EPAのSO₂除去資料では半乾式が約80~90%、乾式カルシウム系反応剤が約50~60%で、一般に半乾式のほうが高効率です。[3]ただしSO₂基準の値なので、焼却炉のHCl・HF除去は反応剤の種類・供給量と排ガス温度に応じて別途設計します。
04 · LAYOUT LOGIC
なぜこの順序で配置し、SCRはどこに置くのか?
排ガス温度が段階的に下がる方向に設備を並べるためで、最も判断が分かれるのはSCRの位置です。SNCRは最高温域、反応塔とバグフィルターは低温を必要とし、SCRは再び一定以上の温度を必要とします。
バグフィルターの前に置くと、触媒がばいじんと酸性ガスにさらされる
SCRをばいじん除去前に置くと、触媒が排ガス中のばいじんと酸性ガスに直接触れます。EPAの資料は触媒劣化の原因に、活性点の被毒、熱シンタリング、アンモニウム硫黄塩や粒子による閉塞、高速ガスによる侵食を挙げています。[2]ばいじんと酸性ガスが多い焼却炉排ガスでは、これらが触媒寿命を左右し得ます。
図7. ばいじんと酸性ガスを含む排ガスが触媒層を通ってからバグフィルターへ向かいます。赤い表示はEPA資料の劣化要因のうちこの配置に関係するもので、層の区分ではありません。概念図であり、大きさと配置は現場ごとに異なります。
出典:株式会社マイクロワン自社技術資料に基づく・AIを活用した概念図
バグフィルターの後に置くと、再加熱が必要になる場合がある
SCRをばいじん・硫黄分の除去後(低温側)に置くと触媒の負担は減るものの、再加熱で運転費が大幅に増えることがあるとEPAは説明しています。[2]韓国の焼却施設はバグフィルター入口を200℃以下で管理するため[5]、バグフィルター後の排ガスはSCRの一般的な運転温度(約250℃以上)[2]に届きにくくなります。実際の配置は触媒の種類と排ガス温度条件をあわせて決めます。
図8. バグフィルター後の排ガスはSCRの必要温度に届きにくく、SCRの前で加熱設備により再加熱する構成が必要な場合があり、その分運転費が増えることがあります。概念図であり、大きさと配置は現場ごとに異なります。
出典:株式会社マイクロワン自社技術資料に基づく・AIを活用した概念図
ばいじんをバグフィルター、NOxをSCRが担う分離型では、2系統分の設置スペースと設備費がかかり、圧力損失の合算で送風負担も増えます。
05 · CHECK ORDER
選定・点検はどのような順序で行うのか?
まず基準値に近い項目を確認し、温度を点検してから、その項目を担う設備を系統順に見ると原因を見つけやすくなります。前段の状態が後段の負担を変えるため、煙突で見えた問題の原因が上流にあることもあります。
- ステップ1 問題項目の確認:韓国の煙道TMS(連続排ガス監視)の30分平均値(連続する5分値6個の平均)[6]で、ばいじん、NOx、酸性ガスのうち基準値への余裕が少ない項目を特定します。30分平均管理とフィルターバッグ選定の関係は「深層ろ過と表面ろ過の違いとは?」で解説しました。
- ステップ2 温度の確認:焼却炉・ボイラ・反応塔の各出口、バグフィルター入口、SCR入口の温度を同じ時間帯で確認します。SNCRの温度域、反応塔出口温度、バグフィルター入口200℃以下の基準、SCRの活性温度はすべてこの値で判断します。運転温度と硫酸の酸露点との余裕は、酸露点温度計算で事前に確認できます。
- ステップ3 設備の点検:問題項目を担う設備から系統順に点検します。症状別の確認箇所は下表のとおりです。
- ステップ4 選択肢の比較:設備の追加、既存設備の改善、既設バグフィルターでの同時処理を、設置スペース、設備費、圧力損失、運転費で比較します。
| 現場の症状 | 最初に確認する箇所 | 理由 |
|---|---|---|
| 負荷変動時にNOxが不安定 | SNCR噴霧位置の排ガス温度 | 低負荷時は最適温度域が上流側へ移動します。[1] |
| 後段の閉塞・腐食、リークアンモニアの増加 | 還元剤注入量と反応温度、SCRなら触媒活性 | 未反応アンモニアが硫酸アンモニウムを生成し後段設備を閉塞・腐食させ得るほか、[1]触媒活性の低下でもリークアンモニアは増えます。[2] |
| HCl・SOxの上昇 | 反応剤供給量、反応塔出口温度、反応生成物の捕集状態 | 酸性ガスは反応剤と接触して固体化することで除去され、反応生成物は後段で捕集されます。[3][4] |
| 反応塔後のバグフィルター差圧上昇 | 反応塔出口温度とろ布の状態 | 半乾式で水分が残ると湿った固体が堆積し、バグフィルターが閉塞し得ます。[3] |
| SCR後のNOx除去率低下 | 触媒入口温度、触媒の閉塞・被毒の有無 | 触媒活性が低下すると、除去率は下がりリークアンモニアは増えます。[2] |
FAQ
よくある質問
SNCRの還元剤は、なぜ焼却炉内で噴霧するのですか?
触媒なしの反応には約870~1,150℃が必要だからです。この温度は炉とボイラの高温域で得られますが、バグフィルター入口の排ガスは韓国の基準で200℃以下のため、後段ではSNCR反応は起こりません。焼却炉とボイラが反応室の役割を果たします。
SDRとDRは何で区別するのですか?
反応剤の投入方式です。SDR(半乾式)は消石灰スラリーを噴霧し水分が蒸発する間に反応させ、DR(乾式)は粉末反応剤をダクトに吹き込みます。どちらも反応生成物は乾いた固体で、後段のバグフィルターで捕集します。
バグフィルターはなぜ反応塔の後に置くのですか?
反応塔で生じた固体の反応生成物と飛灰を捕集するためです。ろ過式集じん機は酸性ガス制御や排ガス冷却と組み合わせることが多く、反応塔の後に置くのが一般的です。
SCRはバグフィルターの前と後のどちらに置くのですか?
常にどちらかが優れるわけではなく、排ガス温度とばいじん・酸性ガスの条件で決めます。前に置くと触媒がばいじんや被毒物質にさらされ、後に置くと再加熱で運転費が大幅に増え得ます。
- U.S. EPA「Air Pollution Control Technology Fact Sheet: Selective Non-Catalytic Reduction (SNCR)」EPA-452/F-03-031。
- U.S. EPA「Air Pollution Control Technology Fact Sheet: Selective Catalytic Reduction (SCR)」EPA-452/F-03-032。
- U.S. EPA「Air Pollution Control Technology Fact Sheet: Flue Gas Desulfurization (FGD) - Wet, Spray Dry, and Dry Scrubbers」EPA-452/F-03-034。
- U.S. EPA「AP-42, Chapter 2.1 Refuse Combustion」1996。
- 韓国法制処「廃棄物管理法施行規則」別表11「廃棄物処分施設又は再活用施設の管理基準」(2026年8月31日改正、韓国語)。
- 韓国環境公団(Korea Environment Corporation)、CleanSYS用語辞典「30分(平均)資料」(韓国語)。



