深層ろ過と表面ろ過の違いとは?
フィルターバッグの捕集位置が、排出濃度と長期的な圧力損失にどのような違いをもたらすのかを解説します。
産業用集じん機でフィルターバッグを選ぶ際は、ダストをどれだけよく捕集できるかに加え、その性能を運転中にどれだけ安定して維持できるかを確認する必要があります。フィルターバッグを新たに取り付けたとき、堆積したダストを払い落とした直後、生産量や排ガス量が変化したときにも、排出濃度を管理しなければならないからです。
前回のコラム「電気集じん機(ESP)とバグフィルターの違いとは?」では、2つの集じん方式の原理と適用条件を比較しました。今回はバグフィルター(ろ過式集じん機)に使うろ材に範囲を絞り、深層ろ過と表面ろ過がダストを捕集する仕組みと運転特性を解説します。

図1. ダストはフィルターバッグの外面で捕集され、ろ過されたガスはバッグ内部から上部のクリーンチャンバーへ移動します。設備構成とガスの流れを簡略化した概念図です。実際のプロセスには、追加の処理設備や送風機などが含まれる場合があります。
出典:株式会社マイクロワン(Micro-one Co., Ltd.)社内技術資料に基づく・AIを活用した3D概念図
01 · EMISSION CONTROL
ばいじん排出濃度の安定性は、なぜより重要になったのか?
韓国では、2019年5月に公布され2020年1月から施行された大気環境保全法施行規則の改正により、ばいじんの排出許容基準が強化されました。当時の政府発表では、施設別のばいじん基準の範囲を従来の10~70 mg/Sm³から5~50 mg/Sm³とし、ばいじん基準の強化率を約33%と説明しています。[1]
これは複数の施設の基準をまとめて要約した当時の改正内容であり、すべての施設に同じ数値が適用されるという意味ではありません。個々の施設については、施設の種類・規模・設置時期などに応じた現行基準と許可条件を確認する必要があります。
排出許容基準が下がると、同じ排出濃度で運転していても基準までの余裕が小さくなります。そのため集じん機は、安定した負荷での性能だけでなく、払い落としやプロセス変動に伴う排出濃度の上昇まで考慮して設計・運転する必要があります。
02 · TMS · 30-MINUTE AVERAGE
TMS 30分平均管理とは何を意味するのか?
煙突自動測定機器であるTMSは、煙突から排出される汚染物質を連続的に測定し、測定データを煙突遠隔監視システムであるCleanSYSへ送信します。施設に応じて、ばいじん、硫黄酸化物、窒素酸化物などの項目を測定します。[2]
TMSの測定値は、5分間の積算値または平均値である5分データとして作成され、30分データは連続する6つの5分データを平均または積算して作成されます。実際のデータ処理には、測定機器の状態とデータの有効性の判断も反映されます。[2]
瞬間的な上昇と、30分平均での排出許容基準超過は区別して判断する必要があります。
払い落とし直後や負荷変動中に生じた濃度上昇も、有効な測定データに反映されれば、その30分平均を押し上げることがあります。短時間の濃度上昇が、そのまま30分平均の基準超過を意味するわけではありません。ただし、上昇幅が大きい場合や繰り返される場合は、管理上の余裕が小さくなります。
そのためろ材には、平常時の高い捕集性能とともに、払い落とし後も排出濃度の変動を小さく抑える性能が求められます。
03 · FILTRATION PRINCIPLE
深層ろ過と表面ろ過は、どこでダストを捕集するのか?
深層ろ過:繊維層の内部でもダストを捕集
一般的なメンブレンなしの不織布ろ材では、ダストが繊維層の内部に入り込みながら繊維に衝突・接触して捕集されます。運転が進むと表面にもダストが堆積してダストケーキ(粉じん層)を形成し、この層が微粒子の捕集に重要な役割を果たします。したがって、一般的なフィルターバッグでも内部捕集と表面のケーキろ過が同時に起こります。[3]
繊維層の奥深くに入り込んだダストは、払い落としで十分に除去できないことがあります。内部にダストが残って蓄積するとガスが通りにくくなり、払い落とし後も差圧が十分に回復しないことがあります。また、払い落としによってケーキ層が除去されたり乱れたりすると、再び安定した層が形成されるまで粒子の通過が増えることがあります。[4]
表面ろ過:主にメンブレン表面でダストを捕集
表面ろ過の代表的な実現方法は、支持用の基材にePTFEメンブレンを貼り合わせたフィルターバッグです。メンブレンがダストの基材内部への侵入を抑え、ダストが主に表面に堆積するようにします。
この構造は、厚いダストケーキが形成される前でも微粒子を捕集するうえで有利です。[5]また、ダストが内部に入り込む現象を減らし、払い落としの際に表面のダスト層がはがれやすくなります。その結果、払い落とし後も捕集性能を維持し、長期的な内部の目詰まりを減らすうえで有利です。これは株式会社マイクロワンがメンブレンとフィルターバッグを設計する際に基準としている構造的特性であり、実際の効果は現場の排出濃度と差圧の推移で確認します。

図2. 左は不織布、右はePTFEメンブレンと不織布が密着した複合構造です。捕集位置と層構造を説明するための拡大概念図です。繊維・粒子・細孔の大きさやメンブレンの厚さは実際の比率ではなく、実際の顕微鏡写真や性能試験結果でもありません。
出典:株式会社マイクロワン社内技術資料に基づく・AIを活用した3D概念図
04 · OPERATING CHARACTERISTICS
捕集位置が変わると、運転はどう変わるのか?
以下の比較は、一般的なメンブレンなしの不織布とePTFEメンブレンフィルターバッグの傾向をまとめたものです。実際の性能は、ダストの特性とろ過速度、払い落とし条件、フィルターバッグの状態によって異なります。
| 比較項目 | 深層ろ過中心の一般的な不織布 | ePTFEメンブレンによる表面ろ過 |
|---|---|---|
| 主な捕集位置 | 繊維層内部と表面のケーキ層 | メンブレン表面と表面のケーキ層 |
| 初期の捕集性能 | ケーキの形成状態に左右される | ケーキ形成前から微粒子の捕集に有利 |
| 払い落とし後の排出濃度 | ケーキが乱れた後、一時的に上昇する可能性 | メンブレンが健全であれば濃度変動の抑制に有利 |
| 長期差圧 | 内部のダスト蓄積により残留差圧が高くなることがある | 初期差圧はやや高いことがあるが、残留差圧を一定に保つうえで有利 |
| メンテナンス | 内部の目詰まりとケーキの保持状態の管理が重要 | メンブレンの損傷・剥離と表面閉塞の管理が重要 |
05 · PRESSURE DROP OVER TIME
メンブレンが表面を覆っていると、差圧は高くならないのか?
新品のときはその通りですが、運転時間が長くなると、たいてい逆になります。ePTFEメンブレンフィルターバッグを初めて検討する現場から最も多く寄せられる質問です。答えは、差圧をどの時点で見るかによって変わります。
当初は、メンブレンのないフィルターバッグのほうが差圧は低い
新品のフィルターバッグは、どちらの方式もダストをよく捕集します。このとき差圧は、メンブレンのない一般的な不織布フィルターバッグのほうが低いことが多いです。メンブレンの微細な細孔そのものがガスの流れに抵抗を加えるためです。新品に交換した直後の差圧だけを見ると、メンブレンフィルターバッグが不利に見えるのはこのためです。
時間が経つと、深層ろ過のフィルターバッグは内部から目詰まりする
深層ろ過のフィルターバッグは、運転するほどダストが不織布の繊維の間に入り込んで蓄積します。繊維の奥深くに入り込んだ微細なダストは、パルスジェット払い落とし(圧縮空気の噴射)でもなかなか落ちません。そのため、払い落とし直後にも残る残留差圧が、払い落としを繰り返すたびに少しずつ上がっていきます。繊維内部の目詰まりが進むほど払い落としによる回復幅が小さくなり、差圧が上がり続けます。残留差圧が高くなると払い落としの頻度を増やす必要があり、送風機の電力やフィルターバッグ交換の負担も大きくなります。
表面ろ過のフィルターバッグでは、ダストが主にメンブレン表面に堆積し、払い落としの際にはがれ落ちます。メンブレンが損傷していなければ、不織布の内部にダストがたまる速度は深層ろ過よりはるかに遅くなります。表面ろ過のフィルターバッグも残留差圧は上がりますが、その上昇はごく緩やかです。そのため、一定時間が経つと深層ろ過より差圧が低くなり、集じん機全体の差圧をより長く安定して運用できます。[6][7]
図3. ePTFEメンブレンフィルターバッグは、運転初期にメンブレンの抵抗と表面のダスト層の形成によって差圧が急速に上がった後、緩やかに上昇します。一般的なフィルターバッグは当初の差圧が低いものの、繊維内部にダストが蓄積して上がり続け、ある時点からメンブレンフィルターバッグより高くなり、その差が広がります。傾向を説明するための概念グラフであり、実測値ではありません。
出典:大韓環境工学会誌(2017)・Advanced Materials Research(2006)の研究結果の傾向をもとに株式会社マイクロワンが作成
| 運転段階 | 深層ろ過(一般的な不織布) | 表面ろ過(ePTFEメンブレン) |
|---|---|---|
| 新品のフィルターバッグ | 差圧は低め | メンブレンの抵抗と初期のダスト層により差圧が急速に上がり、高め |
| 払い落としの繰り返し | 繊維内部にダストが蓄積し、残留差圧が着実に上昇 | ダストが表面からはがれ落ち、残留差圧はごく緩やかに上昇 |
| 長期運転 | 内部が目詰まりし、払い落としても回復しにくく差圧が上昇し続け、払い落とし頻度が増加 | 低い差圧を長く維持(メンブレンが健全な場合) |
韓国の研究チームが実験室規模のろ過式集じん機で、PTFEメンブレンをコーティングしたろ過バッグと、コーティングしていないPTFE不織布ろ過バッグを比較した結果、運転初期の約5時間までは、メンブレンろ過バッグの圧力損失がわずかに高くなりました。その後は逆転し、定常状態ではメンブレンろ過バッグが約36 mmH₂O、コーティングなしのろ過バッグが約160 mmH₂Oを示しました。[6]試験用シリカ(SiO₂)ダスト、ろ過速度2.5 m/min、入口濃度0.6 g/m³、払い落とし周期20分という条件での結果であるため、実際の現場の数値とは異なる場合があります。海外の研究でも、一般的なニードルフェルトはろ過・払い落としを繰り返すほど残留圧力損失が大きくなった一方、ePTFEメンブレンはほぼ一定に保たれたと報告されています。[7]
ただし、メンブレン表面が水分や粘着性物質で覆われると、表面ろ過のフィルターバッグでも差圧が上がることがあります。そのため、フィルターバッグを比較する際は、交換直後の差圧ではなく、払い落としを繰り返した後の残留差圧と、数か月単位の差圧推移を確認する必要があります。
06 · SELECTION & MAINTENANCE
表面ろ過の利点を実際の性能につなげるには?
ePTFEメンブレンを採用したというだけでは、集じん機全体の性能は保証されません。メンブレン全面の細孔分布と欠陥、基材との接合状態、縫製部と取付部のシール状態を併せて確認する必要があります。排ガスの温度と化学組成に合った基材の選定も必要です。
運転条件も重要です。ろ過速度が高すぎたり、払い落とし条件が合っていなかったりすると、差圧や粒子の通過が増えることがあります。実際の評価では、排出濃度、差圧、払い落とし頻度、送風機の電力、フィルターバッグの交換周期を併せて比較することをおすすめします。[8]
ばいじん排出基準が強化され、30分平均濃度で排出状況を管理する環境では、フィルターバッグの瞬間的な捕集効率と、繰り返し運転中の安定性の両方が重要です。表面ろ過は、ダストの内部侵入を抑える構造によってこうした要求に対応でき、その効果は実際のプロセスにおける排出濃度と差圧の推移で確認する必要があります。
FAQ
よくある質問
一般的な不織布フィルターバッグも、表面でダストを捕集しますか?
はい。運転中に表面にダストケーキが形成されると、この層でもダストを捕集します。深層ろ過と表面ろ過の比較は、捕集が1か所だけで起こるという意味ではなく、ろ材の構造によって主に捕集される位置と内部への侵入の程度が異なるという意味です。
表面ろ過のフィルターバッグも差圧は上がりますか?
はい。新品のときは、メンブレン自体の抵抗により、一般的な不織布フィルターバッグより差圧がやや高くなることがあります。ただし運転が長くなると、一般的な不織布は内部にダストが蓄積して残留差圧が上がり続けるのに対し、メンブレンフィルターバッグはごく緩やかに上昇し、低い水準を長く維持する傾向があります。水分や粘着性物質で表面が覆われると、メンブレンフィルターバッグでも差圧が上がることがあります。
ePTFEメンブレンフィルターバッグに交換すれば、排出基準を満たせますか?
交換だけで排出基準の達成を保証することはできません。ろ過速度とダストの特性、払い落とし条件、ろ材の適合性、縫製部・取付部からのリークの有無を併せて確認し、実際の運転データで評価する必要があります。
- 韓国環境部(大韓民国政策ブリーフィング)「2020年から大気汚染物質の排出許容基準を強化」(2019.5.1)(韓国語)。ばいじん基準の範囲と強化率は当時の発表に基づく。
- 韓国環境公団 CleanSYS「用語辞典:煙突遠隔監視システム、5分(平均)データ・30分(平均)データ」(韓国語)。
- 米国EPA, Operation and Maintenance Manual for Fabric Filters.
- 米国EPA, Bag Leak Detection Systems — Guidance.
- 米国EPA, Air Pollution Control Cost Manual, Section 6 Chapter 1 Baghouses and Filters (2018). 1.3.5.3 メンブレンろ材。
- Kim, J.-H. ほか「PTFEメンブレンをコーティングしたろ過バッグのオフライン払い落とし時における微小粒子の集じん特性」(韓国語), 大韓環境工学会誌(J. Korean Soc. Environ. Eng.)39(7), 391–402 (2017).
- Residual Pressure Drop Using ePTFE Micro-Filtration Membrane as Filter Medium, Advanced Materials Research 11–12, 701–704 (2006).
- 米国EPA, Monitoring by Control Technique — Fabric Filters.

